相続・共有名義・法務 最終確認・更新日:2026-10-19

親名義・共有名義の空き家を解体する手順|相続人トラブルの防止法と民法改正(過半数・所在等不明制度)

「実家の親が亡くなり空き家になったが、登記簿の名義が亡くなった親のままになっている」「兄弟3人で実家を相続したが、1人が解体に反対していて取り壊せない」という相談が急増しています。

不動産登記法や民法において、遺産分割を行っていない亡親名義の空き家は「相続人全員の共有(遺産共有)」状態となります。建物の取り壊し(解体)は法律上の「共有物の変更(処分行為)」にあたるため、民法第251条により原則として相続人・共有者全員の合意が必要です。他の共有者に無断で勝手に解体すると、損害賠償請求や器物損壊トラブルに発展するおそれがあります。

民法第251条の原則から、令和5年(2023年)4月施行の民法改正による「所在等不明共有者の裁判決定制度」、解体費用の法的な負担義務、揉めずに進める合意形成ステップ、そして「解体同意書(費用分担条項付き)」の作成法までをわかりやすく解説します。

1. 親名義・共有名義の空き家を勝手に解体できない法的理由(民法第251条)

親が亡くなって遺産分割協議が整っていない建物は、民法第898条により「共同相続人の共有」に属します。共有物に対する行為は、民法上「保存行為」「管理行為」「変更行為(処分行為)」の3つに明確に区分されており、建物の完全な取り壊し・解体工事は『変更行為』に該当します。

民法第251条第1項本文には『各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない』と規定されており、持分割合の過半数ではなく、原則として【共有者全員の一致した合意】が不可欠です。もし共有者の1人が独断で解体業者に発注して更地にしてしまった場合、他の共有者の持分権を侵害したとして民法第709条に基づく不法行為が成立し、解体前の建物評価額に応じた損害賠償請求を受けるリスクがあります。

行為区分法律上の定義(民法)空き家における具体例必要な要件
保存行為(第252条第5項)共有物の現状を維持する行為雨漏りの応急修繕、台風後の危険な外壁・屋根瓦の一部撤去、敷地の草刈り各共有者が【単独】で可能
管理行為(第252条第1項)共有物の利用や改良を目的とする行為空き家の一括借上げ(賃貸化)、外壁の本格塗装リフォーム、短期賃貸借契約持分の価格の【過半数】で決定
変更・処分行為(第251条第1項)共有物の物理的性質や法律上の状態を変更する行為建物の全解体・更地化、増改築、建物の売却、抵当権の設定共有者【全員の一致】が必要

2. 令和5年4月施行の民法改正による「所在等不明共有者制度」の活用

従来は、音信不通でどこに住んでいるかわからない相続人が1人でもいると、全員の同意が得られないため建物の解体も売却も完全に手詰まりとなっていました。この『所有者不明土地・空き家問題』を解消するため、令和5年(2023年)4月1日施行の改正民法により、画期的な2大救済制度が新設されました。

その筆頭が【所在等不明共有者がある場合の変更の裁判(民法第251条第2項)】です。住民票や戸籍の調査を尽くしても連絡がつかない共有者や生死不明の相続人がいる場合、地方裁判所に申し立てを行い決定を得ることで、『残りの所在が判明している共有者全員の同意のみ』で建物の解体工事を行えるようになりました。また、共有者全員へ通知しても確答がない場合に過半数で管理方針を決められる『所在等不明共有者の管理に関する裁判(民法第252条第2項)』も整備され、放置空き家の解決手段が大幅に拡大しています。

3. 解体費用は誰が払うべきか?(民法第253条の費用負担義務と相殺精算)

実務上最もトラブルが少ないのは、『解体工事費はいったん代表者が立て替えて解体・更地化を行い、土地が売れた代金から解体費用全額を代表者に精算返還し、残りの手残り金額を持分割合で等分する』という相殺精算方式です。この取り決めを事前に書面で交わしておくことで、手元資金のない兄弟からもスムーズに同意を得られます。

相続人の構成法定相続分(持分)解体費用総額180万円の法的分担目安円満に解決するための実務アプローチ
長男(代表者)3分の1(60万円)60万円を自己負担解体工事の見積書・領収書を全員に開示し、事前に費用分担の合意書を作成する
次男(県外在住)3分の1(60万円)60万円を代表者へ支払う手元資金がない場合は「更地にして売却した代金から60万円を相殺精算」する
長女(県外在住)3分の1(60万円)60万円を代表者へ支払う解体後の土地を誰が取得するか、または売却して等分するかを同時に取り決める

4. 親名義のまま解体する場合、事前の「相続登記」は必要か?

令和6年(2024年)4月1日より相続登記の申請が法的に義務化され、不動産を取得した相続人は3年以内に登記を行わないと10万円以下の過料に処されることとなりました。

しかし、建物を解体して滅失させる場合の実務においては、【解体前にわざわざ建物の相続登記(名義変更)を行う必要はありません】。亡くなった親名義のまま解体工事を実施し、更地になった後に直接『建物滅失登記』を申請することが法務局の登記実務上認められています。この場合、相続登記にかかる登録免許税や司法書士報酬(数万〜十数万円)を一切支払わずに済むため、費用と手間の大幅な節約になります。

5. 親族と揉めずに進める「解体同意書(合意書)」の必須項目と進め方

口頭のやり取りだけで解体工事を発注すると、工事中や工事後に『そんな金額聞いていない』『勝手に壊された』と親族関係が破綻する原因になります。必ず解体業者と本契約を結ぶ前に、相続人全員の署名・捺印をもらった【解体同意書(合意書)】を作成しましょう。

01
ステップ1 登記事項証明書と解体の相見積もりを取り寄せる

法務局で建物の全部事項証明書を取得して正確な名義と床面積を確認し、解体業者から正式な見積書を取り寄せて総工事費を把握します。

02
ステップ2 相続人全員に「建物の維持管理リスク」を共有する

放置した場合の倒壊賠償責任や、管理不全空家による固定資産税の増税リスク、年間の維持管理費を数字で冷静に伝えます。

03
ステップ3 解体同意書(費用分担条項付き)を作成し全員が署名捺印する

建物の表示、解体への同意、工事費用の負担割合、更地後の土地処分方針、滅失登記申請の代表委任を明記した書面を取り交わします。

04
ステップ4 公認解体業者と本契約を結び、解体・滅失登記を実施する

全員の合意書が揃った段階で解体工事に着工し、完了後は代表相続人が法務局へ単独で建物滅失登記を申請します。

まとめと状況別の相談窓口

この記事の要点
  • 親名義の空き家は相続人全員の共有財産となり、建物の解体には民法第251条に基づき共有者全員の一致した合意が必要
  • 連絡がつかない相続人がいる場合は、令和5年4月施行の民法改正により地方裁判所の決定を得て解体を進める制度が利用できる
  • 解体費用は民法第253条により持分に応じた負担義務がある。揉め事を防ぐため、更地売却代金からの相殺精算を定めた同意書を作成するのが最善
  • 解体前に建物の相続登記を行う必要はなく、亡親名義のまま解体して相続人の1人から直接建物滅失登記を申請できる

空き家の処分や管理で損をしないためには、1つの方法だけに決めつけず、解体工事の見積もりや不用品処分の費用、現状のまま売却した場合の査定額を並べて比較することが大切です。ご自身の状況に合わせて、以下の無料窓口を活用してください。

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